臨床研究のススメ

臨床研究のススメ

リサーチマインドとは?

卒後6~7年目ともなると、自分の専門領域の論文を精読してエビデンスを収集し、それを臨床現場で実践したり、後輩に伝えたりするようになるでしょう。ただし、そのレベルまでは、正直「だれでも」到達できると思います。そこからさらに一段キャリアアップするためには、以下の2点が重要です。

  • 第一に、現在の標準治療の問題点が自分の診療経験を通じて認識できるようになること
  • 第二に、その問題を科学的に解決する方法論が提案できるようになること

 科学的な視点で問題解決を行う能力を、いわゆる「リサーチマインド」と呼びます。このリサーチマインドを育むことは簡単なことではありません。当科では、全員が動画学習システムなどを利用して、基礎的な研究手法について体系的に学びます。また、希望者にはサブスぺ研修中の早い段階で、公衆衛生大学院に国内留学をさせることもあります。このような過程を経て、研究理論を学んだ後は、症例数豊富な第一線の病院をフィールドに臨床研究の実践が始まります。臨床研究を学んだ仲間たちが周囲にいるだけで、日々の臨床から「これは研究題材にならないか」という視点で業務を観察する習慣が徐々に身についてきます。そして我々は研究カンファランスを通じて、「あなたの疑問」を多面的な視点で深堀りしていきます。こうした作業の中で、自分の考えが徐々に洗練されていき、リサーチマインドが育まれていくのです。

 実際、当科では若手医師が自分の発想で、数多くの臨床研究を実施しており、小規模ながらもランダム化比較試験を実施し、その分野のトップジャーナルにも掲載されています。若手医師が自分の手で、計画から実施、解析、論文執筆までの全工程を経験できるように指導していきますので、いままで論文を1本も書いたことが無い方でも大丈夫です。これまで当科で実施した研究は「研究業績一覧」のページと、「臨床研究ピックアップ」のページをご覧ください。

専門医取得後、本格的にキャリアデザインを考えよう

 新専門医制度が整備され、医師の卒後教育は各専門医取得までの道筋が出来てきました。そして、その後のサブスペシャル領域の研修(サブスぺ研修)については、まだ確立したキャリアパスが無いのが現状ではないでしょうか。サブスぺ研修以降は、他人に線路を敷いてもらう医師人生は終了し、自分がキャリアを組み立てるフェーズに入るのです。あなたが目指す将来の医師像の骨組みとなる大切な期間です。

 この時期に、正しい研究手法を身に付け、科学的な論文を書くという習慣が身に付くかどうかが、あなたの将来のキャリアデザインに大きくかかわってきます。卒後7~8年目にもなって臨床の技量がどんどん向上してくると、仕事にやりがいを感じますし、なにより臨床が楽しいと感じるようになるでしょう。研究や論文は後回しにして、とにかく臨床の腕を磨きたいと考える若手医師もいます。そのように臨床に没頭する若手を「ただ見守るだけ」という上司も多いです。しかし、日々の目の前の業務を上手にさばく能力が向上すると、周囲からも頼りにされ、なんだか「できる人」になって気がしてしまいます。そして、徐々に自分の診療行為に疑問を感じなくなったり、豊かな発想が持てなくなってしまいます。そんなときが「危険信号」です。

 すでに学会発表は何度もやっているし、症例報告の論文も書いたことがある、やろうと思えばいつでもできるとお考えの人もいるでしょう。しかし症例報告や症例集積の論文はあくまで記述研究といって、科学的な仮説検証を行う研究とは全く異なる領域です。仮説検証型の医学論文を発表するためには、体系的に研究手法を学ぶことはもちろん、あらたな研究案を創造する力、実際に研究をマネジメントする力が必要で、これらは一朝一夕に身につくものではありません。
 でも心配いりません。このサイトをご覧になっている人の多くは、何となくかもしれませんが、日々の臨床業務に追われてゆっくり物事を考えるゆとりが無いことに疑問を感じていることでしょう。きっと環境が整えばそこから大きく飛躍することができると思います。ぜひ当科の教育理念やプログラムの概要をご覧いただければと思います。

Physician Scientistを目指そう

自分の手で治療を行い、その効果を科学的に検証し、明日からの臨床にフィードバックする、そのような臨床医をPhysician Scientistと呼びます。臨床研究を学び、実践することこそが、臨床医をより臨床医たりえるものにする最良の方法であると考えています。

私たちは臨床・研究を両立しようとする熱意ある仲間を求めています。共感できる部分があれば、遠慮なくお問い合わせください(問い合わせ・応募はコチラから)。